トヨタ物語 (強さとは「自分で考え、動く現場」を育てることだ)

はじめに

自分は日本に住んでいるにも関わらず、今までトヨタという会社についてあまり知ろうと思っていなかった。
理由は良く分からない。
自分が関心のあるソフトウェアの開発とは畑が違う会社だと思っていたのかもしれないし、高度成長期に成功を収めた既に勝ち抜けた会社からは、何も学ぶことはない感じていたからかもしれない。

ある日、とあるスクラム開発のセミナーに参加した時に、講師役の外国人の方に

私は今日、KAIZENの発祥の地と言える日本の皆様の前で話ができることを光栄に思う

と言われた。

アジャイルやリーン、スクラムという考え方に、トヨタ生産方式が少なからず影響を与えたことは前々から知ってはいた。
しかし、自分はトヨタという会社のことをあまりにも知らなかったし、知ろうともしていなかった。
そして遠く外国から来た人達から、私たちと同じ国に住んでいるトヨタの人達が世界中に広めたKAIZENについて学ぶという、なんとも言えない本末転倒な感じが、とても恥ずかしくなった。

自分は外国人が書いたアジャイルやリーンといった単語が並ぶタイトルの本ばかり読んでいた気がする。
折角、日本語でトヨタ生産方式に関する多くの文献が読めるというのに・・・。

そんな自分の浅はかさに対する反省を踏まえて、手に取ったのがこの本というこになる。

トヨタという会社のイメージ

この本を読んでまず思ったのは、トヨタという会社はなんてチャレンジングな会社なんだろうということだ。
それまでは、ザ大企業、堅実な経営、王様というイメージを持っていたが、完全に見方が180度変わった。

ある程度ドラマチックに描かれている部分はあるとは思うのだけども、様々な苦境を乗り越えてきたのは事実だと思う。
特に創業からある程度の期間までは、完全なる地方のベンチャー企業だったと言える。
労働条件も結構劣悪だったみたいだし、従業員は副業しないと生きていけない時期もあったらしい。

チャレンジして、倒産しそうになったり、リストラしたり、戦争に巻き込まれたり、貿易摩擦で問題になったり・・・。
その度に運も味方に付けつつ、なんとか生き延びてきた会社という印象が強くなった。

大野耐一

恥ずかしながら、大野耐一という人物を初めて知った。
この本の半分以上は、大野さんとその弟子たちの話に終始しているといっても過言ではない。

彼は、現在良いとされているリーダーシップとは、かけ離れたやり方でトヨタの体質を改善していった。
長時間労働を強いて、パワハラまがいなことなんでザラ。
大野さんにシゴカれた人は、亡くなった今でも思い出すだけで青ざめてしまうほど恐ろしかったという逸話に事欠かない。

海外の経営者は指導者は、理論や理屈を重視する。
それは今の自分にとって、耳障りの良い言葉が多い。
そして自分でも同じことを実践してみたいと思わせてくれる。
それはそれで素晴らしいと思う。

けど、大野さんは理論や理屈よりも、まずは体験、実践を重視する。
この違いはとても興味深い。
とにかく、悩め、苦労しろ、やりきれ、みたいな精神論や根性論が多く感じる。
耳障りではない、どうしようもない泥臭さが、とにかく自分の心に響いた。

大野さんの言っていることは、全然簡単じゃない。
常人には出来る気さえしない。
結局は自分で打破していかないといけないし、とにかくしんどい思いした先にしか答えはないと言われている気がする。
あまりに身も蓋もない言いっぷりが、逆に気持ちよかった。

トヨタ生産方式

この本では、トヨタ生産方式とは何なのかということは、詳細には書かれていない。
しかし、なぜトヨタ生産方式が必要だったのか?ということは書かれている。
弱者(トヨタ)が強者(アメリカの自動車会社)に勝つためにはどうしたら良いのか?というのが出発点なのだが、これは今のベンチャー企業にも当てはまる気がする。

弱者が強者に勝つための方程式なんて、どこにも無いんだろうなと思う。
運に左右されることも多いんだろう。
トヨタの運を見逃さない準備する姿勢が、とにかく凄いと感心させられた。

自分が印象に残っているのは、ハイブリッドカーの開発を推し進めている時のトヨタだ。
他の自動車会社は、トヨタ程ハイブリッドカーの開発に力を入れてれていなかった気がする。
結果的に一人勝ちみたいな状態になったと思うんだけど、このあたりの攻めの姿勢は、トヨタっぽいなあと思った。

トヨタ生産方式の手法は、製造業じゃないと直接的には役に立たないかもしれない。
が、トヨタ生産方式を作り上げる過程や、その背景にある思想は同じ日本人として、きっと参考になると思う。
是非勉強していきたいと思った。

おわりに

読み終わった後の率直な感想は「とても感動した」だった。
トヨタという会社の本気度がとにかく凄い。
徹底している。

きっと真似は出来ないし、しても大怪我するだけだと思う。
自分は凡人なので、大野さんのような振る舞いなんて到底出来ない。

けど、トヨタから何か少しでも学んで、自分の身の回りの環境を改善していけたらなと思う。